答え逢わ


「そ、そのようなことは???ただ、お聞きしておりましたクシナダヒメさまと、余りにご様子が違いましたので、多少驚いたのは確かです???」

「おねえさんたち。ぼくがちびのころから、いつも遠くからじっと眺めていたでしょ?」

「ちびのぼくを、みんなで怖がらせて喜んでいたんだ、???悪趣味だねぇ。」

「あの。それは、お元気でお過ごしかどうか、ご様子を伺いに参っただけでございますよ。」

ほら、やっぱりそう研究 中心だったんだ。
意外な種明かしに、少しばかり驚いた。

気を良くして、もう少し話を振ってみた。

「姿は見えないけど、クシナダヒメっているんだよね?この屋敷の中に。」

おねえさんは、それには応えずその場に突っ伏して「お許しくださいませ。」と平身低頭だった。

「いやだなぁ???ぼく、先に一目会いたいと思っただけだよ。だって???」

「ぼく、「そのため」に呼ばれたんでしょ?」

カマをかけてみた。

「それにね、「関係」あるんだもの。会いたいと思っても不思議じゃないでしょ?」

「ご存知だったんですか?」

思いがけず、返答のその声は明るい。
何が何だか分からないけど、とりあえずぼくは知ったかぶりをして、深く頷いた。

「ああ。左様でございましたか。では、神楽の席であなたさまがクシナダヒメ様と魂を交代なさるのも、御承諾なさったのですね。」

「ご決断されるかどうか、みなで気を揉みました。ああ、良かった。」

魂の交代????ざっと血の気が引くのが自分で分かった。
そうか???そういうことか。

「やれ、嬉しや。」

「緋色様の、積年の思いが成就する、めでたき日が今度浸會大學BBAこそ来ようとは。」お姉さんは、嬉々として俄然、口が軽くなった。

「とうとう、クシナダヒメさまの血流、稲田家とヤマタノオロチの血流、海鎚家の御婚姻が叶うのですね。」

「まことに、おめでとうございます。」

「あ???、はい。」

もう、いいよ。

解ってしまった。
親父が頭を下げた、人身御供と言う意味。
ぼくがぼくでなくなるという、本当の意味。

孤立無援、と言う言葉くらいいくら物を知らないぼくでも知っている。
もう1つ、こんなときに使うのは、四面楚歌だっけ????
妙に冷静になっている気がする。

???違う。
今のこの気持ちはたった一人何も知らなかった、単なる「疎外感」だ。
昨日みたいに、ぼくの身体を誰かに(クシナダヒメだか姉ちゃんだか)明け渡すために「神楽」が奉納されるってことなんだろ?
親父とお袋を前に、ぼくはずるずるの着物のまま、仁王立ちしていた。

「ぼくは、この世から綺麗さっぱり、いなくなっちゃうってことなんだね。」
「クシ、すまん。」

もうこれ以上、隠し切れなくなったと悟って、親父は饒舌に語った。

「こうなったら、知っている限り、何でもるから聞いてくれ。」

居直ったような父親と、黙って涙ぐむ母親と何だか、いつもと様子が違っていた。
二重にぼんやりと、白髪頭の老夫婦が見えるような気がする。

「姉さんか、妹か知らないけど、ぼくがちびのときに亡くなった人とぼくの魂が入れ替わるんだろ?どこにいるの?」

「もう、分かってしまったんだから、会えるのならせて。話をするくらいいいでしょ?」

断られるかと思ったけれど、おふくろがすっと立っていらっしゃいと言って、部屋を出た。
案外女の人のほうが、いざとなったら肝が据わっているのかもしれない。
古い屋敷の中浸大工商管理を迷う事無くお袋は歩き、やがてクシナダヒメの絵をかけてある部屋に入った。
この家で、ぼくが最初に通された部屋だった。

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