に断しが決


「すみません。図々しくお世話になります。」
「エアコンは使えるが、建物と一緒で家具も風呂もずいぶん古いんだ。不自由が有ったら何でも言って来ると良い。他の学生向けマンションの空き部屋から、取ってきてあげるよ。」
「ありがとうございます。家電があると直ぐに生活できるんで助かります。」

尊の友人が紹介してくれたアパートは、琉生の校区内の場所で駅前の繁華街から少し離れた静かな所にあった。

築40年の古いアパートは、数年後には取り壊まっていて、新しいマンションが立つ予定らしい。家主の話だと、残って實德金融いる入居者も、今は数人しかいないという事だった。
無償でも構わないよ、というありがたい申し出はさすがって、格安で家財付きの部屋を借りた。

尊は荷物を運びこむとホームセンターへ行き、掃除機やアイロンなど少しの小物家電と布団を買った。
自分も独り暮らしをしているから、必要なものは分かる。洗濯機や冷蔵庫など、最小限の生活必需品は揃っているので、出費も大した事は無い。
そのまま、琉生を迎えに行く。

「琉生!」
「あ。尊兄ちゃん!」
「もう引っ越し終わったぞ。行こう。初めての一人暮らしだな。」

夕方、校門で出て来るのを待っていた尊は、そのまま車で琉生を新しい住処へと案内した。琉生は助手席で、不安そうにしていた。
初めての一人暮らしだ、無理はない。

「学校からも塾からも近いんだ。いい場所だろ?」
「うん。え~と……すごくアンティークな建物だね。」
「築40年ものだからな。でも中は、思ったより綺麗なんだ。解体が決まってから、住人も引っ越しを始めているから、静かだよ。」
「じゃあ、あまり人がいないんだね、ここ。」

琉生は鍵を受け取ると、自分の城になった部屋へと足を踏み入れた。

「わぁ~……台公屋二按所とは別に2つも部屋がある。へぇ~、家具もこれ全部備え付けなの?」

琉生はあちこち見て回った。

「エアコン何て贅沢だから、扇風機で我慢しろと言いたかったんだが、備え付けなんだ。建物は古いけど、家電はまだ三年くらいしか経ってないそうだ。いい物件だろ?」
「でも……尊兄ちゃん。ぼく、高いところは払えないよ?夏休み以外、バイトはできないし、お母さんのお金は大事に使わないと。うんと、切り詰めなきゃ。」
「心配するな。同級生の親が不動産屋だったんだ。友達割引で、敷金礼金無しで家賃は3万5千円だ。しかも光熱費、水道代込みだぞ。」
「すごい~!尊兄ちゃん、見て、見て。トイレとお風呂が別々だ。」

話も聞かず、違うところで感動している琉生の姿を見て、尊は吹きそうになった。

「気に入ったか、琉生。」
「うん。ここなら油絵描いても平気だね。臭いを気にしなくていいなんて、うれしいなぁ。ぼくね、美術部で油絵始めたから、自分のアトリエが欲しかったんだ。それに、部屋があるから、尊兄ちゃんにも隼人兄ちゃんにも泊まってもらえるね。」
「そうだな。早速、隼人が帰りに寄るそうだ。晩飯はどうする?」
「近くにスーパーあったっけ?」
「あるぞ。行ってみるか?」
「うん。ぼくカレー實德作るよ。三人で食べよう。」